NHKでニュースになった感染症罹患時の登校許可書(登園許可書)の取得と提出について

 2018年2月9日、NHKにより「インフルエンザ 『登校許可書』が波紋呼ぶ」と題されたニュースが報じられた。次のリンクはこの報道を元にしたウェブページ上の記事だ。※
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180209/k10011322831000.html
※ 2018年2月15日まで参照が可能だったNHKのウェブページ上の記事は、2018年2月16日になって削除された。現在は参照することができない。
  Googleによる検索でもタイトルがヒットしなくなった。

 このニュースでは、新宿区立戸塚第一小学校の校長先生が児童の
保護者へ、医師の判断による「登校許可書」の提出を求めている
ことをインフルエンザの流行と共に報じている。
 このような学校から保護者への要請に対して、医療機関はどのように
この状況をみているのか。

 NHKのニュースでは、次の医療機関が登場した
① 都立小児総合医療センター(救急救命・先天性疾患・小児がん・外傷を主とする)
② 新宿区のクリニック(このシーズンに数十通の登校許可書を発行した)

 都立小児総合医療センターは東京都府中市に所在する。
小児医療の拠点となる病院だ。ここでは、登校許可書は
発行しないことを院内で周知している。それは、救急の
患者が多い中で、文書発行の依頼が診療の妨げになる
という理由による。



 このニュースによるNHKのウェブページ上の記事に
おいては、「『登校許可書』などの書類を求めるかどうか
は、自治体や教育委員会によって異なっていて、沖縄県は
こうした書類を一切求めないとしている」と締めくくられていた。

 登校許可書の発行は、受診して診断がされた医療機関にて
されるもの。多くの保護者はこのように認識しているだろう。
これは間違っていない。①のような医療機関の限られた
医療資源を人命救助に向けようとする医療機関の姿勢。
これも間違ったことではないと多くの視聴者は理解するだろう。
では、どうすることがこの問題の解決に近いのかについて、
このニュースからはヒントが見えない。


 このNHKのウェブページ上の記事と対比させるために、
「本当に必要?インフルエンザの登校許可証明書」と題された
朝日新聞のウェブページ上の記事から次の内容を紹介する。
https://www.asahi.com/articles/SDI201702018194.html

    「初回質問票にこれまでの経過を書き、学校指定の
   登校許可証明書の用紙と一緒に受付に出したところ、
   しばらくして看護師さんにこう聞かれた。
   『休日診療所で何かメモとか、もらわなかった?』。
   メモらしきものをもらった気もするが、持って来て
   いないと答えると、『それがないと、インフルエンザ
   だったことが分からないのよ。もう治っちゃってるし』。」






 ここでいうメモとは、インフルエンザの迅速診断キットに
よる結果か、それに準じたインフルエンザの何型が陽性であった
ことを示すものだろう。
そして、この看護師とのやり取りが生じた状況はこうだ。
高熱が出て、インフルエンザが疑わしい状態のわが子を
受診可能だった小児科へ連れていった。
 インフルエンザの診断を受けて自宅で子どもを静養させた。
熱が下がり、子どもは元気になったので、決められた日数が
経過すれば学校へ登校することができるようになる。
そこで、混雑する小児科を避けて、自宅近くの内科医院を
訪れて、登校許可書を取得しようとした。

 前述のNHKのウェブページ上の記事で示されたことは、
地方自治体によって登校許可書の要・不要が異なっており、
これを必要とした場合に医療機関へ負担となる状況が発生
しているということだ。

 この記事が、読者の役に立ち、負担を強いられる医療機関の
助けとなるためには、医師からの医学に基づいたコメントを
取材する必要がある。
 なぜならば、医師は自身が診断していないインフルエンザの
治癒後の様子を問診することが医師にはできる。
インフルエンザの診断結果のカルテ照会も、診断した
医療機関へ連絡すれば可能だ。この結果により、他院で診断され
発症していたインフルエンザの治癒後の登校許可書を発行する
ことは可能になる。
 そうではあるのだが、これは開業医にとって明らかに負担だ。





 このような実状を、医師への取材によって知ることは、
②のクリニックにおいても可能であったのではないだろうか。
このクリニックは、「小学校が指定する医療機関」として
記事上で紹介されていた。そして、この指定する医療機関とは、
新宿区学校医 医療機関一覧に掲載されたクリニックであり、
「『新宿区学校医 医療機関一覧』に掲載のある医療機関で
作成した場合、公費負担となります」「児童・生徒が通学して
いる学校の学校医でなくても、次の表に記載されている
医療機関であれば治癒証明書(登校許可書)の発行は無料です。」
と新宿区から案内がされている。


 この登校許可書が公費負担であるかどうかは、区市町村に
よって違いがある。そして、記事に登場した都立小児総合
医療センターの所在する府中市においては「次の市内契約
医療機関での証明は、費用は掛かりませんが、その他医療機関では
費用が掛かる場合がありますので、ご注意ください。」と、
府中市教育委員会から注意喚起がされている。

 乳幼児や児童の医療費が助成される地方自治体が多数あるなかで、
登園や登校を医師が判断して許可することは医療機関にとっての負担だ。
 同時に、この許可書を取得することは保護者にとっての費用負担に
なっている場合がある。

 この問題の解決に近づくには、より多面的な事実関係をつかむ
ための取材が必要なのではないだろうか。
 報道各社が「登校許可書(登園許可書)」の問題へ、より一層の
関心を寄せてくれることに期待したい。

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